chat with samurai 10月27日(木)

 常連の皆さんが欠席だった本日は、常連になったTさん、新たに加わったLさん、最後に 飛び入り参加してくれたQさん、そしてオオタの4人でした。

 タイビン県出身のTさん、Lさんは魚好き。特に、T さんは「池魚・イケザカナ」(淡水 魚)が大好き。オオタがベトナムの「池魚」を検索して、「これは知ってますか?」と写真を 見せるたびに「おいしそう!やば〜い、食べた〜い!」を連発(T さんは、現在、イケザカ ナと縁遠い地で暮らしています)。 一世代上の同郷の L さんも、T さんのイケザカナ・フリークぶりに苦笑しつつも、ニコ ニコ顔でサカナ談義が弾みます。L さんは海魚・ウミザカナも好きで、生魚も昔から平気だ ったそうで、口数は多くないものの T さんに劣らずサカナ・フリーク(なお、お二人とも お寿司が大好きです)。 わたしも大型淡水魚の料理は食べてみたいと思っていたのですが、お二人のサカナ愛に 刺激を受け、ますます食べてみたいと強く思うようになりました。

 

 さらに、話は魚料理の話からパーティーの話へ。 地元の最大のおめでたいパーティーはやはり、披露宴。Tさんの地元では 6 人掛けデー ブルで 30 脚、180 人くらいが集まって披露宴が行われるとか。Lさんの時は 150 人ほどが 集まったそうです。 そのパーティーの前に、奥さんを迎え入れる行事があるそうです。 Lさんの時は、200km 先で待つお嫁さんの実家にむけて、Lさんと親族がバスで夜中の 1時に出発し、6時間後の7時に到着、そこからお嫁さんと、お嫁さん方の親戚もバスを仕 立てて加わり、新郎側の故郷へ。午後の1時に到着したそうです。Lさんは、楽しくもあり ながら、疲労困憊で車中、寝ていたとか。

 200km 圏とは、例えば、東京からだと上諏訪(長野県)、越後湯沢(新潟県)、いわき市 (福島県)、藤枝市(静岡県)、大阪からだと岡山(岡山県)、名古屋(愛知県)、福井、串本 (和歌山県)のようです。

 ベトナムの当時の道路事情からすれば一大イベント。Tさんも、 新郎が新婦をお迎えするこのような行事(移動)を小さいときに何度か経験させられたそう です。

 新郎の実家に戻ると、披露宴。先に書いたように近隣から 150-200 名の方々が集まるパ ーティーとなります。 T さんのお父さんの場合は、料理の腕を見込まれて近隣の披露宴で料理作りを毎回、依頼 され、朝から晩まで鳥、牛、豚、海老などを調理し続けるとか。終わった後、肩や腰が痛く なるとこぼしている父に、「もうやめたら?ボランティアなんだし」というと、「やめたら、 お前が嫁ぐときどうするんだ」とTさんをたしなめるそうです。

 

(前回に引き続き超個人的な感想)冠婚葬祭に代表されるような行事に時間・労力を投入して、互酬性の網の目の中で、緩やかな時間が流れるコミュニティを大切にする父世代。社会人として時間を有効に活用し、忙しく活躍し、個を大切にする娘世代。Tさん父娘の会話は、経済成長 が進行し、生活や意識の都市化が進行するなかで、両者の意識の差が、穏やかながら徐々にぶつかりつつあるベトナム社会の現在地点のように感じます。 かつての日本もたどった道のりを、私よりも年下世代のベトナムの人たちがリアルタイムでたどっているのを見るとき、楽しそうに話す、みなの話を聞きながら、私自身は過去にタイムスリップをして、日本のたどった過去の時代を間近で見ているような感覚を覚えます。年下世代でありながら、わたしの叔父などの年長世代と重なる経験をしつつある、という意味ではわたしの「先輩」でもあると感じます。 わたしの接している、わたしより若い世代のベトナムの人たちは、個を大切にするとはいえ、人とのつながりも大切にする人たちです。これから先、ベトナム社会がどのように変化していくのか気になります。 “chat with samurai”での会話をつうじ、生徒さんたちと共有するさまざまな領域や接点に気づくことで、三人称の存在であった彼らが二人称の存在に近づいてくる。そうなってきたときに、人生という同じフィールドに生きている「仲間」とでもいうような感覚を共有するようになり、みなとの会話を通じて、自分を深め、成長させるものをえていると感じます。 前回と同じことを書きますが、臨床心理学やフィールドワークをともなう文化人類学の領域に興味をもつ若い世代の人には、ぜひ、別の日の”chat with samurai”を担当してみてもらいたいと思います